仕事を終えたあと
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パートを辞めた60代。毎日が暇になった私が、手帳に最初に書いた一行

住宅街の坂道を歩く女性の後ろ姿
kuroko

パートを辞めた翌週の火曜日、私は朝の八時に、まだ寝間着のまま台所に立っていました。

急ぐ理由が、何ひとつなかったからです。

スーパーのレジに、12年立ちました。

辞めたのは63歳の春です。

理由は、ひとつではありません。

同じ時間に立っているのが前より疲れるようになったこと。

新しいレジの操作を覚えるのに、前より時間がかかるようになったこと。

そして、娘に「もう無理しなくていいのに」と言われたこと。

送別の日、パート仲間から花束をもらいました。

「これからは自由ね。うらやましい」

そう言われて、私も笑って「ゆっくりするわ」と答えました。

本当に、そのつもりでした。

「暇でいいわね」と言われるのが、いちばんつらい

辞めて一か月が経つころには、一日の組み立て方がわからなくなっていました。

朝は起きます。でも、起きる理由がありません。

洗濯をして、掃除をして、それでもまだ十時です。

テレビをつけると、番組が次の番組に変わっていきます。

気がつくと夕方で、夫が帰ってきます。

「今日は何してた?」

そう聞かれるのが、だんだん嫌になりました。

何もしていない、と答えるのが嫌なのではありません。

何もしていないのに、疲れているのが嫌でした。

近所の人に「毎日ゆっくりできていいわね」と言われると、うまく笑えませんでした。

元同僚からの、一枚のはがき

夏のはじめに、はがきが届きました。

三年前に先に辞めた、パート仲間の佐山さんからでした。

暑中見舞いの余白に、こう書いてありました。

「私も辞めた年は、曜日がわからなくなりました。だから、週に三つだけ、家を出る用事を作りました」

週に三つ。

多くも少なくもない数でした。

私は、その数字をしばらく見ていました。

思えば、パートに行っていた12年間、私の予定はぜんぶ「シフト表」に書かれていました。

自分で決めた予定を、私はもう何年も書いていませんでした。

手帳に、最初に書いた一行

その日の帰り、文房具売り場で手帳を買いました。

大きな手帳は、やめました。

書く欄が広いと、空白が目立つからです。

選んだのは、一日に一行しか書けない大きさのものでした。

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最初に書いた予定は、これだけです。

「火曜 十時 図書館」

それ以外の日は、空白のままにしました。

翌週の火曜日、私は十時に家を出ました。

図書館までは、歩いて二十分です。

借りたのは、料理の本が一冊だけでした。

でも家に帰ってから、手帳の「火曜」の欄に、小さく丸をつけました。

丸をつけるために出かけたようなものでしたが、それでよかったのだと思います。

三日で終わりかけた、朝の散歩

図書館の帰り道、川沿いの道を歩いている人を何人も見ました。

それで、朝の散歩を足してみることにしました。

けれど、三日で終わりかけました。

理由は二つあります。

一つめは、靴です。

家にあったのは、買い物用のスニーカーでした。

三十分ほど歩くと、右の親指の付け根が痛くなりました。

幅がきついのだと、そのとき初めて気がつきました。

二つめは、雨です。

四日目が雨でした。

一日休んだら、次の日も休みました。

そのまま一週間、靴は玄関に置いたままになりました。

靴を選ぶときに、決めた条件

もう一度始めるために、靴を買いに行きました。

売り場には、驚くほどたくさんの靴がありました。

軽いもの、走れるもの、見た目のきれいなもの。

最初は値段の安い順に見ていました。

でも途中で、自分が続かなかった理由を思い出しました。

足が痛くならないこと。雨の日でも履けること。

この二つだけを条件にしました。

見た目や色は、二番目にしました。

幅の広いもの(4Eという表示のもの)を選び、雨の日でも大丈夫なものにしました。

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続けるための靴であって、頑張るための靴ではありません。

川沿いの道で、挨拶する人ができた

朝七時半に家を出て、川沿いを三十分歩いて帰る。

手帳には「月・水・金 朝」とだけ書きました。

毎日にしなかったのは、休んだ日に自分を責めたくなかったからです。

二週間が過ぎたころ、同じ時間に、同じ犬を連れた女性とすれ違うようになりました。

三度目に、向こうから「おはようございます」と声をかけられました。

四度目には、私から言いました。

名前は知りません。何の仕事をしている人かも知りません。

それでも、朝に挨拶をする人がひとりいるというのは、思っていたよりずっと大きなことでした。

秋になって、その人に「そこの角のパン屋さん、火曜だけ焼きたてなんですよ」と教わりました。

それ以来、火曜の図書館の帰りに、そのパン屋に寄るようになりました。

手帳の火曜の欄には、いま二つの予定が書いてあります。

半年後の手帳

あれから半年が経ちました。

手帳はまだ、半分以上が空白です。

埋めるつもりもありません。

夫に「今日は何してた?」と聞かれると、今は答えられます。

「川沿いを歩いて、パンを買ってきた」

それだけのことですが、以前のように言いよどむことはなくなりました。

ときどき、パート時代の夢を見ます。

レジの前に立って、次のお客さんを待っている夢です。

目が覚めると、少し寂しくなります。

けれど、火曜日の朝には、行くところがあります。

あなたなら、どうしますか?

もし来週、自分のためだけの予定をひとつ入れるとしたら、何曜日の何時にしますか。

そして、その予定に「行く理由」をひとつだけ足すとしたら、何にしますか。

今週、ひとつだけ決めるなら

ひとつで十分です。決めた日を、カレンダーに書いてみてください。

この物語から、考えたいこと

1. 予定がなくなると、曜日の感覚から消えていく

仕事をしている間は、予定が向こうからやってきます。

辞めたあとは、予定を自分で作らないかぎり、一週間が均一な時間になります。

「毎日」と決めずに、「週に二つか三つ」から始めるほうが続けやすかった、という人もいます。

2. 「暇を埋める」より「出かける理由」を作る

時間を埋めようとすると、やることを探し続けることになります。

そうではなく、家を出る理由をひとつ作ると、その前後の時間も自然に決まります。

図書館、買い物、散歩、教室。目的は小さくてかまいません。

3. ひとりで始めたことが、顔見知りにつながることがある

友達を作ろうとしなくても、同じ時間に同じ道を歩いていると、挨拶をする人ができることがあります。

名前も知らない関係で十分です。

無理に誰かと約束をしなくても、外に出る理由があれば、人とのつながりは後からついてくることがあります。

振り返りチェック

当てはまるものに、印をつけてみてください。診断ではありません。自分を振り返るためのものです。

印をつけた数:

数が多くても少なくても、良い・悪いはありません。

この物語に登場したもの

ここから下は物語ではなく、物語に出てきた道具の情報です。主人公が選んだときの条件(足が痛くならないこと・雨の日でも履けること)に合う商品の一例で、登場人物が実際に使ったものではありません。販売ページやメーカーの記載にもとづく事実だけを載せています。

晴雨兼用のウォーキングシューズ(幅広)

選ぶときは、足の幅の表示(3E・4Eなど)・片足の重さ・雨の日に履けるか・脱ぎ履きのしやすさを見ると選びやすくなります。

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  • メーカー:ムーンスター
  • 販売ページの記載:晴雨兼用・防水・4E・22〜25cm
  • 販売ページの記載:重さ 270g(片足/22.0cm)・プラットフォームの高さ2cm・レースアップ
  • 販売ページの記載:素材は合成繊維、ソールは合成底
  • 足の形や幅の感じ方には個人差があります。可能であれば、実際に履いて確かめてください

A6サイズのマンスリー手帳

選ぶときは、1日に書ける行数・持ち歩けるサイズ・何月始まりかを見ると選びやすくなります。

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  • 販売ページの記載:サイズ 幅11.1×高さ15.4cm・96頁
  • 販売ページの記載:月間ページはブロック式・日曜始まり・月別インデックス・ペンホルダー付き
  • 販売ページの記載:掲載期間は2026年12月1日〜2028年3月31日

※価格は変動するため、最新の価格は販売ページでご確認ください。

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この記事について

※この記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。
※このお話は、実際に寄せられている相談や声を参考に、物語として再構成しています。登場人物・出来事は実在のものではありません。
※記事中の写真はイメージです。

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