子育てが終わって虚しい。55歳の私が、25年ぶりに平日の昼に出かけた日

春の坂道を、ひとりで歩く女性の後ろ姿
kuroko

末の娘が就職で家を出た日、私は玄関で「体に気をつけてね」とだけ言いました。

泣くと思っていたのに、涙は出ませんでした。

その代わり、次の日の朝、五時半に目が覚めました。

二十五年間、そうしてきたからです。

長女、長男、末の娘。

三人分のお弁当を、毎朝この台所で作ってきました。

でもその朝は、作るものがありませんでした。

悲しいわけではないのに、虚しい

一週間が過ぎても、五時半に目が覚めました。

やることがないので、洗濯をして、掃除をして、それでも七時です。

スーパーでは、いまだに三人分の量を買ってしまいます。

夫は言いました。

「これからは自由だな」

その言葉に、うまく笑えませんでした。

自由という言葉が、こんなに手応えのないものだとは思っていなかったのです。

悲しいわけではありません。

娘は元気にしているし、月に一度は連絡もあります。

それなのに、虚しいのです。

この気持ちを、誰にどう話せばいいのか分かりませんでした。

押し入れから出てきた、半券

春の終わりに、私は娘の部屋を片付け始めました。

いつか戻ってくるかもしれない、と思って残していた参考書を、まとめて縛りました。

押し入れの奥から、古い布のバッグが出てきました。

私が独身の頃に使っていたものです。

持ち手のところが、少し黒ずんでいました。

中に、小さな紙が入っていました。

美術館の半券でした。

日付は、二十五年前の秋。

長女を身ごもる前に、ひとりで観に行った展覧会です。

あのとき、私は何を思いながらあの絵の前に立っていたのか。

思い出せませんでした。

二十五年ぶりの、平日の昼

半券を見つけた次の週、私は美術館に行くことにしました。

平日の水曜日、午前十一時。

子どもがいた頃は、絶対に選ばない時間です。

問題は、持っていくものでした。

家にあるのは、パート時代に使っていた黒い大きなバッグだけです。

肩にかけると、十分で肩がこりました。

それに、展覧会の図録は入りません。

そこで、新しいバッグを買うことにしました。

決めた条件は三つです。

肩が痛くならない軽さ。

A4の図録が入ること。

急に雨が降っても、中身が濡れないこと。

色は、子どもの送り迎えで選んでいた「汚れが目立たない色」ではなく、自分が好きな色にしました。

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当日、美術館は驚くほど空いていました。

平日の昼間の展示室には、五、六人しかいません。

私は、好きな絵の前に十五分立っていました。

誰にも「まだ?」と言われませんでした。

帰りに、図録を一冊買いました。

図録は思ったより厚く、帰りの電車では膝の上に置いていました。

受付の人に、名前を覚えられた

それから、月に一度、平日に出かける日を作りました。

美術館、植物園、少し遠い商店街。

三度目に行ったとき、美術館の受付の人にこう言われました。

「今月から、新しい展示が始まりましたよ」

顔を覚えられていたのだと分かりました。

名前も知らないし、それ以上の話もしません。

けれど、その一言があるだけで、行く場所がひとつ増えた気がしました。

半券は、手帳に貼るようになりました。

三枚、四枚とたまっていきます。

娘からの電話

夏の終わりに、娘から電話がありました。

「元気にしてる?」

そう聞かれて、私は答えました。

「昨日、植物園に行ってきたよ」

少し間があって、娘が笑いました。

「お母さん、楽しそうだね」

連絡の回数は、今も月に一度のままです。

それでも、聞かれたことに答えられる自分が、少しうれしかったのです。

お弁当を作らない朝は、自分の分だけコーヒーを淹れます。

二十五年、していなかったことです。

あなたなら、どうしますか?

もし来週の平日に、半日だけ自由な時間があるとしたら、どこへ行きますか。

そして、その場所を選ぶときに、誰かの都合を考えずに決められますか。

今週、ひとつだけ決めるなら

ひとつで十分です。決めた日を、カレンダーに書いてみてください。

この物語から、考えたいこと

1. 虚しさは、悪いことではない

役割が大きかった人ほど、その役割が終わったときの空白も大きくなります。

悲しいわけではないのに力が入らない、という状態は、めずらしいことではありません。

無理に前向きにならなくても大丈夫です。

2. 「予定がない」ではなく「予定を自分で決められる」

子育ての間、予定は向こうからやってきました。

これからは、決める側になります。

最初は、行き先より「曜日と時間」を決めるほうが動きやすいことがあります。

3. 一度やめたことを、もう一度だけ

結婚や出産の前に好きだったことを、ひとつ思い出してみる。

同じように続けなくてかまいません。

一度だけ行ってみて、合わなければやめてもいいのです。

振り返りチェック

当てはまるものに、印をつけてみてください。診断ではありません。自分を振り返るためのものです。

印をつけた数:

数が多くても少なくても、良い・悪いはありません。

この物語に登場したもの

ここから下は物語ではなく、物語に出てきた道具の情報です。主人公が選んだときの条件(肩が痛くならない軽さ・A4が入る・雨に強い)に合う商品の一例で、登場人物が実際に使ったものではありません。販売ページやメーカーの記載にもとづく事実だけを載せています。

軽いトートバッグ(A4が入る)

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  • ブランド:レガートラルゴ(legato largo)
  • 販売ページの記載:重量400g・タテ30×ヨコ(上部40/底部34)×マチ13cm
  • 販売ページの記載:ショルダー全長55cm・A4サイズ収納可・ポケット2(内側)
  • 販売ページの記載:外装はナイロン・撥水加工
  • 販売ページの表示:並行輸入品
  • 選ぶときは、重さ・A4が入るか・持ち手の長さ・雨に強いかを見ると選びやすくなります。

※価格は変動するため、最新の価格は販売ページでご確認ください。

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この記事について

※この記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。
※このお話は、実際に寄せられている相談や声を参考に、物語として再構成しています。登場人物・出来事は実在のものではありません。
※記事中の写真はイメージです。

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