働かない老後を選ぶと後悔する3つの理由
「ようやく自由になれる」
定年退職の日、多くの人がそう感じるかもしれません。
朝早く起きなくていい。満員電車にも乗らなくていい。嫌な上司とも、もう顔を合わせなくていい――。
でも、その“自由”は、想像以上に孤独で、退屈で、重たいものかもしれません。
働かない老後を選んだ多くの人が、ある日ふと感じるのです。
「…このままで、本当に良かったのだろうか」と。
この記事では、働かないことを選んだシニア世代が直面する“後悔”のリアルと、その背景にある共通点を紐解いていきます。
そして、後悔しない老後を送るために、今からでもできるヒントをお届けします。
「もう働きたくない」その気持ちは、決して間違っていません。
でも、“働かない”という選択が、あなたの人生から何を奪うのか――
一緒に考えてみませんか?
老後に「働かない」を選んだ人たちの声
「もう働かなくていい」と思っていたはずなのに――
退職後の数年を経て、ふと湧き上がるのは、思いもよらなかった“空虚感”でした。
ここでは、老後を迎えて「働かない」という選択をした方々の声をご紹介します。
Aさん(65歳・元公務員)
「年金と退職金で何とかなると思ってたんです。でも、暇な時間がこんなに長くて、こんなに寂しいとは思いませんでした。最初は旅行や趣味で楽しかったけど、3ヶ月もすると、何のために起きて、何のために1日を過ごしているのか、わからなくなってきて…」
Bさん(70歳・元会社員)
「仕事をしていた頃は、“働きたくない”が口癖でした。でも今は、“何か役割が欲しい”って毎日思ってます。ちょっとでも人の役に立てていた頃の方が、気持ちが明るかった気がします。」
Cさん(68歳・元パート勤務)
「体が元気なうちは、週に2〜3回でも何か仕事していた方が、心も元気でいられると今ならわかります。誰かに“ありがとう”って言われるのが、こんなに嬉しいなんて…」
こうした声から見えてくるのは、お金よりも“心の充実”の喪失です。
定年はゴールと考えていた多くの人が、働かない老後に“予想外の壁”を感じているのが現実なのです。
「働かない老後」で後悔する人の共通点3つ
共通点①:お金の計算が“現実”とズレていた
「年金だけで暮らせると思っていた」
「退職金と貯金があれば安心だと思っていた」
…そう語る方々が、想像以上に多いのです。
たとえば、65歳で退職してから90歳まで生きると仮定した場合、25年間の生活資金が必要になります。
仮に月20万円で暮らしても、総額は6,000万円。
もちろん、年金である程度は補えますが――
・予想外の医療費(がん・認知症・骨折など)
・住宅修繕や家電の買い替え
・子や孫への“つい”な支援
・物価上昇による生活費の増加
こうした出費は「想定外」として軽視されがちです。
結果として、退職後3年以内に貯金が底をつき、焦ってアルバイトを探し始める方もいます。
「もう少し働いて資金を蓄えるべきだった」という後悔は、現実に多く聞かれます。
共通点②:人との関わりが激減した
働いている時は、たとえ煩わしさを感じていても、職場という“社会との接点”がありました。
しかし、仕事をやめた瞬間――
・連絡が途絶えた元同僚
・子どもたちは独立して家に誰もいない
・地域活動にも入っていない
このようにして、孤立した生活が静かに始まってしまうのです。
社会と繋がる手段としての「仕事」は、お金のためだけではありません。
自分の存在を誰かに認められる場所。
日常のリズムを整えてくれる場。
それが、生きがいや心の健康に大きく関わっていることを、引退後に気づく人は少なくありません。
共通点③:自由な時間を持て余すようになった
「働いていた頃は、毎日があっという間だったのに…」
「退職後は、1週間が1か月に感じるようになった」
こう語る人に多いのが、“時間の重さ”に耐えられないという後悔です。
やりたいことが明確にある人は、退職後も充実した毎日を送れます。
しかし多くの人は、いざ自由になると、
・何をしていいのか分からない
・趣味にハマれるタイプでもない
・新しいことを始める気力も出ない
という状況に陥りがちです。
結果、一日のほとんどをソファで過ごすようになり、
心身の衰えを実感しながらも「何もしていない自分」に自己嫌悪を感じるようになります。
「少しでも仕事をしていれば、生活にメリハリができたのに…」
という声が、後悔の形としてよく聞かれます。
この3つの共通点を見て、「自分にも当てはまりそう」と思った方もいるかもしれません。
でも、今から備えをしておけば、同じ後悔を避けることができるのです。
後悔しない「ちょっと働く老後」のススメ
老後=完全リタイア、という固定観念は、もはや過去のものかもしれません。
今、多くの人が選んでいるのは、“ゆるやかに働き続ける”老後です。
ここでは、「ちょっとだけ働く」というスタイルが、なぜ今の時代に合っているのか?
そして、どんな選択肢があるのか?を見ていきましょう。
1.「少し働く」ことで得られるメリット
▸心と体の健康を保てる
仕事をすることで、毎日の生活にリズムが生まれ、脳や体も自然と動きます。
週に2〜3日だけのパートでも、
・朝起きる目的がある
・外に出て人と関わる機会ができる
・簡単な作業で適度に体を動かす
といった要素が、認知症の予防にも繋がることが分かっています。
▸社会とのつながりが保てる
“孤立が一番こわい”というのは、老後を経験した人の実感です。
ちょっとした仕事でも、
・「おはよう」と声をかけ合う
・感謝されたり、必要とされる
・ちょっとした雑談ができる
これだけで、「自分はまだ社会の一員だ」と感じられるのです。
▸お金の面でも安心につながる
仮に月5万円でも、年間60万円のプラス。
年金+αの収入があるだけで、
・貯金の減りを抑えられる
・急な出費にも対応しやすくなる
・娯楽や趣味に罪悪感なくお金を使える
という精神的な余裕にも繋がります。
「働けるうちは少しでも稼いでおく」――これは、最もシンプルで確実なリスクヘッジです。
2.無理なく続けられる“ちょい働き”の選択肢
「でも、もうフルタイムでは働けない…」という声もあるでしょう。
ここで紹介するのは、体力や経験に合わせて選べる“ゆるやかワーク”です。
▸週2〜3日のパート・アルバイト
・スーパーやコンビニの軽作業
・清掃や館内巡回のシニア向け業務
・品出しや軽作業系(座り作業中心もあり)
→体力に応じて勤務日数や時間を調整できるのが魅力。
▸在宅ワーク・スキマ副業
・データ入力、文字起こし、簡単なブログ作業
・手作業の内職(シール貼り・封入など)
・得意を活かすスキル販売(イラスト、文章、写真など)
→移動が難しい方でも、家にいながらお金とやりがいを得られる時代です。
▸地域活動やボランティアと謝礼
・地域の子ども食堂スタッフ
・図書館や公民館の案内ボランティア
・高齢者向け体操教室の補助役
→直接的な「給料」ではない場合もありますが、交通費や謝礼程度の収入と社会参加の満足感が得られます。
3.「働くこと」に対する“心のハードル”を下げる
老後に働くことに抵抗がある人もいます。
「この歳で働くなんて恥ずかしい」
「みじめに思われるのでは?」
――そうした気持ちも、決して珍しくありません。
でも、今は時代が変わりました。
・70代で再就職する人
・80歳でYouTuberを始める人
・夫婦でシェアワークをする人
も珍しくない時代。
「働く=老後が失敗した」というイメージは、むしろ時代遅れになりつつあるのです。
「働くことで自分らしさを保つ」「健康に過ごす手段としての仕事」――そんな新しい価値観が、静かに広まりつつあります。
例から学ぶ「ちょっと働く老後」のリアル
“完全リタイア”ではなく「少しだけ働く」という選択をした方々は、どんな風に日々を過ごし、どんなことを感じているのでしょうか?
ここでは、3人の例を通して、「ちょっと働く老後」の現実と、その魅力をお伝えします。
事例①:週3日、近所のスーパーでパート勤務|Sさん(68歳)
「仕事があるって、ありがたいことなんだって、やめて初めて気づいたんです」
定年退職後、半年はのんびり過ごしていたSさん。
しかし、自由なはずの毎日が、次第に「退屈で寂しいもの」に変わっていきました。
そんなとき、近所のスーパーでレジ補助の求人を発見。
「週3日、1日4時間なら無理なく続けられそう」と応募し、今も継続中です。
「ちょっと働くだけで、生活にメリハリが出ました。毎日人と話すのも楽しいし、“ありがとう”って言われるのが、すごく嬉しいんです」
小遣い程度の収入ですが、日々の充実感は何物にも代えがたいと話します。
事例②:趣味のブログが収入に|Tさん(70歳)
「好きなことを続けていたら、自然と収入がついてきました」
Tさんは、もともと写真が趣味。
退職後、「自分の写真に言葉を添えて残したい」と、無料ブログを始めました。
すると、ある日コメント欄に「そのカメラ、詳しく教えてください」という質問が。
そこから紹介リンクを貼ったところ、ほんの少しですが収益が発生。
「これなら、楽しみながらお小遣い稼ぎになるなと思って」
今ではシニア向けブログ講座の講師としても呼ばれるようになり、「週1回の講座が生きがいです」と話します。
事例③:週1回のボランティアで“生きがい”を再発見|Nさん(73歳)
「お金にはならないけれど、“ありがとう”の言葉が一番の報酬です」
Nさんは、地元の高齢者サロンでお茶出しや軽い手伝いを週に1回行っています。
「退職後、特にやることもなくて…。でも、ここでの交流が私の“居場所”になったんです」
交通費程度の謝礼をもらいながら、利用者と世間話をするのが楽しみだと話します。
「自分が役に立っていると感じられる。それが、何よりも心を豊かにしてくれるんですよ」
3人の共通点は、「フルタイムの再就職」ではなく、
自分のペースに合わせて、無理なく続けているという点です。
・体力や気分に合わせて働く
・やりがいや楽しみを重視する
・社会との接点を持ち続ける
――それが、後悔しない“ちょっと働く老後”の秘訣です。
「少しだけ働く老後」の始め方
「ちょっと働く老後」に興味はあるけれど、
・何から始めればいいの?
・自分にできることなんてあるの?
・年齢的に採用されるか不安…
そんな声が多く聞かれます。
ですが、心配はいりません。
無理なく、自分らしく働くためのステップは、意外とシンプルなんです。
ステップ①:「なぜ働きたいのか?」を考える
まずは、「なぜ今、働きたいと思ったのか?」を明確にしましょう。
たとえば…
- 年金だけでは不安だから→【短時間でも時給の良い仕事】
- 社会とつながりを持ちたい→【地域のボランティアやサロン活動】
- 生活に張り合いがほしい→【趣味を活かした活動】
目的がハッキリすると、働き方の方向性も見えやすくなります。
ステップ②:得意なこと・好きなことを棚卸しする
「働く=我慢すること」ではありません。
せっかくなら、自分の経験や趣味を活かした仕事を選びましょう。
例:
- 人と話すのが好き → 接客や販売補助
- 手先が器用 → 軽作業や内職
- SNSやPCに慣れている → ブログ執筆やデータ入力
- 子育て経験がある → 子育て支援や学童サポート
無理に「新しいこと」に挑戦しなくても、
“これまでの人生”がそのままスキルになるのです。
ステップ③:「シニア歓迎」や「在宅」などに注目
最近では、60代・70代を対象にした求人も増えています。
チェックすべき求人サイトやサービス:
- シルバー人材センター(各自治体)
- タウンワークなどの短時間求人
- クラウドソーシング(在宅・スキマ時間OK)
- ハローワークの「生涯現役支援窓口」
「仕事を探す」ではなく、「自分に合った生き方を探す」という気持ちで、気楽に見てみてください。
まとめ「老後に働かない」という選択を後悔しないために
私たちは「老後はのんびり過ごすもの」「もう働かなくていい」と、どこかでそう思い込んでいます。
でも、実際に“何もしない日々”を迎えてみると、多くの人がこうつぶやきます。
「こんなはずじゃなかった…」
家にいても話す相手がいない。
時間だけが過ぎていく。
年金の振込額を何度も見ては、不安が募る。
“自由”のはずだった老後が、いつの間にか“孤独”と“焦燥”に変わっていく。
そんな声を、私たちはたくさん聞いてきました。
でも、希望はあります。
その不安や後悔を打ち消してくれるのが――「少しだけ働く」という選択肢です。
✔️ 週に1度の短時間でも
✔️ お金よりも“役割”を感じられる場でも
✔️ たとえ報酬がなくても、“ありがとう”と言われる関わりでも
「誰かの役に立てている」
「今日も自分は必要とされている」
そんな実感こそが、老後の心をふんわりと温めてくれるのです。
もう年だから…
体力が心配だから…
――そんな声が聞こえてきそうですが、だからこそ、「自分に合った働き方」を見つけることが、これからのあなたを支えてくれます。
“人生を休む”のではなく、“人生を味わう”老後へ。
小さな一歩を踏み出せたその時、
あなたの老後は、きっと――静かに、そして力強く動き出します。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。