老後破産に陥る夫婦の共通点5つ
「うちは夫婦ふたり、年金もあるし、まあ大丈夫でしょ」
そう思っていたAさんご夫妻が、まさか70歳を前に自己破産することになるなんて――
誰が想像したでしょうか。
若い頃から共働きで頑張ってきた。
マイホームも買って、子どもも独立して、ようやく迎えた“第二の人生”。
ところが、少しずつ生活費が足りなくなり、
車の買い替えや住宅の修繕、病気の入院、孫への援助……。
気づけば貯金は底をつき、ローン返済が重なり、年金では到底まかなえない生活になっていました。
「夫婦ふたりなら安心」――
その思い込みが、かえって危険だったのです。
実際、近年では60代・70代の夫婦世帯の破産が増えています。
しかも、「特別な事情があったわけではない普通のご夫妻」が、
気づかないうちに破綻に向かってしまっているのです。
その背景には、いくつかの共通した“老後破産の特徴”があります。
- お金の話を避けたまま老後を迎える
- 現役時代の生活スタイルを変えられない
- 子どもに頼られても断れず、お金を出し続ける
本記事では、そんな「老後破産した夫婦に共通する5つの特徴」と、
そこから学べる“安心して老後を生きるための備え”についてお話しします。
夫婦だからこそ陥りやすい落とし穴に気づくことで、
今からでも“後悔しない老後”はつくれます。
「自分たちは大丈夫」と思っているうちが、実は一番危ない。
この記事が、そのことに気づくきっかけになれば幸いです。
老後破産に陥る夫妻が実際に増えている現実
「老後に破産なんて、一部の人だけの話でしょ?」
そう思っている方も多いかもしれません。
けれど、現実は――“誰にでも起こりうること”なのです。
データが示す“老後破産の増加”
近年、自己破産をする60代・70代の割合がじわじわと増え続けています。
法務省や各自治体の統計によれば、
- 60代以上の破産申立数は、全体の約2割以上
- 特に「夫婦世帯」での破産事例が目立つ
- 理由の多くは、「年金だけでは生活が成り立たない」こと
つまり、“特別に贅沢をしていたわけでもない”
“普通の生活を送っていた夫婦”が、気づかぬうちに「老後破産の入り口」に立っているのです。
夫婦だからこその“油断”が落とし穴に
「二人いれば安心」――
この感覚が、実は落とし穴でもあります。
- 相手に任せっぱなしでお金の流れを把握していない
- なんとなく生活が回っているから、支出の見直しを後回し
- 親や子どもへの支援で出ていくお金が想定外に増える
結果として、年金やわずかな貯金だけでは生活が維持できなくなり、
借金やローンに頼り始めてしまうケースも少なくありません。
破産に陥ったご夫妻の“共通点”とは?
後ほど詳しく解説しますが、
老後破産に陥った夫婦にはいくつかの“共通する行動パターン”があります。
それは――
- 「なんとかなる」と思って備えを怠る
- お金の話を避けて、現実を直視しない
- 子どもや世間の目を気にして、見栄を張る
…といった、ごく日常的な“ちょっとした油断”の積み重ねです。
「まさか、自分たちが」と言っていた人が、
ある日突然、生活保護の相談窓口に座っている――
そんな時代だからこそ、
今ここで「破産する夫婦の特徴」を知り、自分ごととして見つめ直すことが大切です。
老後破産に陥る夫妻の特徴5つ
老後破産に陥ったご夫妻を取材・分析していくと、
その多くに“ある共通のパターン”があることが分かってきます。
いずれも特別な話ではなく、誰もが日常の中でやってしまいがちなことばかり。
逆にいえば――
これらの“特徴”を知っておくだけで、老後破産のリスクは大きく減らせるということです。
それでは、一つずつ見ていきましょう。
①生活費の見直しをせず「なんとかなる」と思っている
「年金が入るし、持ち家もあるし、なんとかなるでしょ」
この“根拠のない安心感”が、最も危険です。
現役時代の収入と同じ感覚で生活費を使い続け、
- 外食や趣味の出費が減らない
- 電気・水道・通信費が見直されない
- 医療費や突発的な支出が増えていく
結果として、気づいたときには毎月赤字が当たり前という状況に。
「減る年金・減らない生活費」は、夫婦世帯でも容赦なく家計を圧迫します。
②夫婦間で「お金の話」をしない
「お金のことは夫に任せてる」
「妻に任せっきりで、よくわからない」
夫婦のどちらか一方だけが家計を把握している状態は、
老後に大きなリスクをもたらします。
- 万が一、どちらかが倒れたときに資産管理ができない
- 預貯金・年金額・保険の内容を共有していない
- 借金や滞納があっても気づかない
お金の話をするのは気まずいことかもしれません。
でも、「知らなかった」は、老後の破綻を早める最大の要因になります。
③持ち家への過信がある
「うちは家があるから、家賃の心配はない」
確かに家は大きな資産ですが、それが負債になることもあるのです。
- 修繕費・固定資産税などの維持コストが年々重くのしかかる
- バリアフリーにリフォームするのに数百万円かかる
- 相続トラブルや空き家問題で子どもに負担がかかる
「家さえあれば安心」という思い込みは、
将来の見えないコストを見落とす原因になります。
④子どもや親族への援助で貯蓄を使い果たす
- 子どもの結婚・住宅購入への援助
- 孫の教育費や塾代の肩代わり
- 親の介護費用や兄弟の保証人
「家族だから助けたい」という気持ちは尊いものですが、
自分たちの生活が立ち行かなくなっては意味がありません。
援助を断れないことで、
- 退職金を一括で使ってしまう
- 自分たちの老後資金がゼロになる
- 最悪、連帯保証で負債を背負うことに
「家族に頼られない勇気」「断る力」も、老後には必要な選択です。
⑤見栄や世間体を気にして生活レベルを落とせない
「近所づきあいがあるから、見劣りしたくない」
「昔の仲間との旅行は断れない」
こうした“人付き合いの延長線”で出費が膨らみ、
気づけば節約もできず、貯蓄も減り続けているというケースも少なくありません。
特に夫婦どちらかが浪費気味だと、もう一方も言い出せず、
気まずさから“見て見ぬふり”になってしまうことも…。
本当に必要な出費と、見栄でしている出費。
この違いを、老後のタイミングで改めて見直すことが求められます。
これら5つの特徴に共通しているのは、
「意識のズレ」と「見直さないこと」です。
老後破産は、ある日突然やってくるのではなく――
日々の小さな判断の積み重ねで、じわじわと近づいてくるもの。
では、その破産を防ぐには、夫婦でどんな備えをすればいいのでしょうか?
夫婦で老後破産を防ぐために“今”できること
「破産した夫婦の共通点は分かったけれど…」
「じゃあ、自分たちはどうすればいいの?」
そう感じたあなたへ。
この章では、“今からでも間に合う”具体的な対策を3つご紹介します。
大切なのは、「完璧な計画」ではなく、
夫婦で同じ方向を向き、これからの暮らしに備えることです。
①夫婦で「お金の棚卸し」をする
まずは、「自分たちのお金がどうなっているのか」を見える化しましょう。
✔ 年金の見込み額
✔ 預貯金・資産・投資の状況
✔ 毎月の支出と固定費
✔ ローンや借入があればその残額
✔ 保険の内容や受け取り人
この「お金の棚卸し」は、夫婦で一緒にやることがポイントです。
どちらかに任せきりにせず、二人で話し合いながら確認することで、
将来の不安も自然と共有され、「何から備えるべきか」が見えてきます。
②「ない前提」で暮らす習慣を身につける
老後破産を防ぐ最大の武器は、「質素さを楽しむ力」です。
✔ 外食を月2回減らして、自炊を増やす
✔ 旅行は日帰りでも楽しめるように工夫
✔ 必要なものと、欲しいだけのものを見極める
✔ サブスクや保険、使ってない契約を整理する
「今までの暮らしを守る」ことより、
「これからの暮らしを軽くする」ことにシフトするのがコツです。
“削る”のではなく、“選ぶ”。
それが、ストレスの少ない節約のはじまりです。
③家族に頼らない生活設計を立てる
「老後は子どもがなんとかしてくれる」
その期待が、思わぬ落とし穴になることもあります。
✔ 子どもや親族への経済的援助は“計画的に”
✔ 介護や病気のときは「公的制度」や「サービス」を活用
✔ 死後のことも考え、「エンディングノート」や「死後事務委任契約」も視野に
「子どもに迷惑をかけたくない」という思いは、決して間違っていません。
だからこそ、「頼らずに生きる仕組み」を夫婦で整えておくことが、最大の優しさになります。
これらの備えは、何も一度にやる必要はありません。
今日、話し合ってみるだけでもいいんです。
「老後を守るために、夫婦で手を取り合う」
それが、破産という未来を防ぐ最も確実な方法です。
Q&A:老後破産と夫婦のお金に関するよくある質問
ここでは、夫婦での老後を考えるときに、多くの方が感じる不安や疑問を取り上げ、
「実はみんな同じことで悩んでいるんだ」と安心していただけるよう、やさしく解説します。
Q1:年金受給が始まれば、安心できるのでは?
A:年金だけで“安心”できる人はごく一部です。
平均的な夫婦の年金受給額は月20万円程度ですが、
実際の生活費は月25〜30万円ほどかかるケースも多く、赤字になることは珍しくありません。
年金だけに頼らず、以下をチェックしておきましょう:
- 生活費の見直し
- 予備費(医療・介護費)の確保
- 必要に応じて働く期間の延長も選択肢に
Q2:夫婦でお金の話をするのが苦手です…
A:最初は“雑談”からで大丈夫です。
「いくらあるの?」「何に使ってるの?」と詰め寄るのではなく、
「もしどっちかが倒れたらどうする?」
「老後、どんな暮らしがしたい?」など、未来の理想や不安を共有する雑談から始めましょう。
お金の話は、“信頼の確認”でもあります。
不安を分かち合うことで、心の距離も自然と近づきます。
Q3:持ち家があれば老後は安泰では?
A:必ずしもそうとは限りません。
持ち家には、次のような“見えない支出”があります:
- 固定資産税
- 修繕・リフォーム費
- 老朽化による資産価値の下落
- 相続・空き家のリスク
資産であると同時に、「維持費がかかるもの」としても考えておく必要があります。
場合によっては、売却や住み替えの選択肢も柔軟に考えることが大切です。
Q4:老後破産って、本当に増えているの?
A:はい。特に60代・70代の破産件数は、年々じわじわと増加しています。
背景には以下のような要因があります:
- 長寿化による“想定外に長い老後”
- 物価上昇と医療・介護費の増加
- 子どもへの援助・借金保証の負担
破産は「特別な人がするもの」ではありません。
“普通の暮らし”をしていた人ほど、油断から陥ることが多いのです。
【まとめ】夫婦だからこそ、守れる老後がある
「まさか、自分たちが破産なんて――」
老後破産に陥ったご夫妻の多くが、口をそろえてそう語ります。
特別な贅沢をしたわけでもない。
派手にお金を使ってきたわけでもない。
ただ、“なんとなく”で暮らしていた日常の積み重ねが、気づけば破綻につながっていたのです。
でも、どうか忘れないでください。
夫婦で歩んできた年月があるからこそ、
これからの老後を“ふたりで守る力”もきっとある。
- お金の話を避けずに、共有すること
- 見栄や過信を捨て、身の丈に合った暮らしを選ぶこと
- 子どもや家に期待しすぎず、“自分たちの生活”を優先すること
そうした積み重ねが、
破産という未来から、あなたたちを遠ざけてくれます。
「うちは大丈夫」と思っている方ほど、今こそ見直してほしい。
安心は、“なんとなく”では生まれません。
でも、備えさえすれば、どんな家庭にも手が届くものです。
夫婦で同じ未来を見て、同じ方向に歩いていく――
それがきっと、何よりの「老後の保険」になるはずです。
今日からできることを、ひとつずつ。
あなたの老後は、まだ間に合います。
老後コンパスは、そんなご夫婦の“道しるべ”であり続けます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。